
マウスピース矯正の痛みを和らげる方法は次のとおりです。
- 痛み止めを服用する
- 患部を冷やす
- 柔らかいものを食べる
- 十分な睡眠を取る
- 適切にチューイーを噛む
- 歯科医師に相談する
いずれも初心者でも実践しやすい対処法ですので、痛みが辛い時は試してみてください。
痛み止めを服用する
まず手軽で効果的なのが痛み止め薬の服用です。
市販の鎮痛薬(イブプロフェン、アセトアミノフェン=パラセタモール等)は、矯正に伴う炎症や痛みを和らげるのに有効であり、研究でも矯正装置装着後に鎮痛薬を使用する患者さんは少なくなく、適切に用いれば痛みをかなり軽減できることが分かっています。
もちろん鎮痛剤は用法用量を守り、長期間連用しないよう注意しましょう。また数日経っても痛みが治まらない場合は、無理に薬でしのがず歯科医に相談することも大切です。
参考:Orthodontic pain with fixed appliances and clear aligners: A 6-month comparison - PubMed
患部を冷やす
歯や歯茎がズキズキと痛む場合には、患部を冷やすのも効果的です。
痛みを感じる箇所に冷たいタオルや保冷剤を当てて冷やすと、血行が一時的に収縮し炎症が鎮まるとともに感覚が麻痺して痛みを感じにくくなります。
ただし、直接肌に氷を当てると凍傷になる恐れがあるため必ず布で包み、長時間連続して冷やしすぎないように注意してください(1回15分が目安)。
柔らかいものを食べる
矯正中の歯は歯周組織が炎症を起こしているため、食事は柔らかいものを選ぶことで痛みを緩和することができます。
具体的には、スープ、ヨーグルト、オートミール、おかゆ、よく煮込んだ野菜・肉・魚などがおすすめです。例えば朝食ならヨーグルトやスクランブルエッグ、昼食・夕食ならシチューや煮込み料理、豆腐料理、麺類など、噛まずに済むか軽く噛む程度で食べられるメニューが適しています。
痛みが落ち着いてきたら徐々に通常の食事に戻して構いませんが、矯正期間中はできるだけ片側に偏らず両側均等に噛むよう意識しましょう。
十分な睡眠を取る
意外かもしれませんが、十分な睡眠を取ることも痛みの感じ方に影響します。
人間の身体は疲労していたり睡眠不足だと痛みに敏感になる傾向があり、研究でも一晩徹夜した翌日は痛みの閾値(しきい値)が下がり、普段より弱い刺激でも痛みを強く感じてしまうことが確認されています。つまり、しっかり休息を取っている時の方が痛みの程度は楽になります。
具体的には、少なくとも毎日7〜8時間程度の睡眠を心がけましょう。装置の違和感で寝付きにくい場合は就寝前に痛み止めを服用したり、室温調整や軽いストレッチを取り入れるなど、「痛いから眠れない」ではなく「眠ることで痛みを和らげる」という発想で工夫を凝らしてみましょう。
参考:Poor sleep can change your reaction to pain - Harvard Health
適切にチューイーを噛む
マウスピース矯正特有のアイテムには「チューイー」があり、チューイーを噛んで装置を完全にフィットさせることで前述の「定着不足」による局所的な痛みを防ぐ効果が期待できます。
チューイーは直径1〜2cmほどの円柱状の柔らかいシリコン製の補助具で、マウスピースを歯に密着させる役割を果たします。チューイーを噛むことで装置がしっかりはまれば力が均等に伝わり、局所的な圧力点も減るため痛みが和らぎます。
また、チューイーを適度に噛むことで歯周組織の血行が促進され、鬱血やむくみが軽減して痛み物質の洗い流しを助けると考えられています。事実、矯正患者における研究ではガムを噛むなど、噛む運動をした人は鎮痛薬に匹敵するほど痛み軽減効果があったと報告されています。
参考:Chewing gum as a non-pharmacological alternative for orthodontic pain relief: A randomized clinical trial using an intention-to-treat analysis
歯科医師に相談する
痛みがどうしても我慢できない場合は、遠慮せず歯科医師に相談することも大切です。
矯正の痛みには個人差があり、中には極端に強く感じてしまう人もいます。また明らかにおかしい痛み(一本だけ激痛が続く、顎関節に痛みが出て口が開けにくい等)の場合は、装置の不具合や予期せぬトラブルの可能性もあります。そのような時は我慢せず専門家の判断を仰ぎましょう。
歯科医師は痛みの相談にも慣れており、状況に応じて適切なアドバイスや処置をしてくれます。マウスピース矯正は基本的に自分で装置を着脱する治療ですが、何か異変を感じたら自己判断せず医師に相談することが、安全で快適に治療を進める上で重要になります。