マウスピース矯正の治療期間は、歯並びの状態(不正咬合の種類)によって異なります。
いずれも症状が軽度であれば比較的短期間で終わることもありますが、重度の場合は治療に長い時間がかかる傾向があります。
ここでは以下の代表的な症状ごとに、マウスピース矯正で治療した場合の期間の目安を解説します。
- 出っ歯
- すきっ歯
- 八重歯
- 正中不一致
- オープンバイト
- クロスバイト
- 叢生
出っ歯

出っ歯(上顎前突)とは、上の前歯が前方に突出している噛み合わせです。
マウスピース矯正でも出っ歯の改善は可能で、軽度から中等度の症例であれば治療期間は通常約1〜2年で完了します。ただし、非常に重度の出っ歯や骨格的な問題があるケースの場合、抜歯矯正や外科的処置が必要になることもあり、2年以上の治療期間を要することが少なくありません。
すきっ歯

すきっ歯(空隙歯列)は、歯と歯の間にすき間がある状態です。
マウスピース矯正が得意とする症例で、隙間が小さい軽度のケースなら半年〜1年程度で治療が完了することもあります。一方、歯と歯の間に目立つ隙間が複数あるような中等度以上のケースでは、全体的に歯を移動させる必要があるため治療期間は1〜2年ほどは見込む必要があります。
なお、欠損歯がすきっ歯の原因に起因している場合には、マウスピース矯正だけでなく補綴治療(人工歯による隙間の補填)を併用することも検討されます。
八重歯

八重歯とは、主に犬歯(糸切り歯)が他の歯と重なって飛び出している状態のことです。
マウスピース矯正で八重歯を治療する場合、軽度から中度のケースであれば1〜2年程度の治療期間で歯列を整えられることが多い傾向にあります。歯の重なりが大きい重度の八重歯や他の不正咬合も併発している場合には、歯の移動量が多く複雑になるため2年以上かかる場合もあります。
正中不一致

正中不一致は、上と下の前歯の中心がずれている状態です。
マウスピース矯正における正中ズレの一般的な治療期間の目安は約1〜2年とされています。例えば、片側だけ歯が押し出されて正中が2mm程度ずれているようなケースであれば、1年半ほどで改善した例があります。
しかし、原因が顎骨格の非対称にある場合や、歯の欠損・偏位など複合的な要因が絡む場合には治療が難しく期間も長引く傾向があり、最大で3年程度かかるケースもあります。加えて、左右両側の歯を大きく動かす必要がある症例では、ワイヤー矯正や外科手術との併用が必要になるケースもあります。
オープンバイト

オープンバイト(開咬)とは、奥歯を噛んでも前歯が噛み合わず隙間が空いている状態です。
マウスピース矯正での治療期間は一般に1〜3年程度が目安とされています。マウスピース矯正は開咬の治療で早期効果が出やすいとも報告されており、ある症例ではワイヤー矯正で約2年かかる開咬の治療が、マウスピース矯正で約9ヶ月で改善したケースもあります。
もちろん全ての症例がこのようになるわけではなく、開咬の程度によって実際の治療期間は前後することを念頭に置いておく必要があります。
クロスバイト

クロスバイト(交叉咬合)とは、一部の上下の歯の噛み合わせが左右にずれている状態で、上の歯が本来噛み合うべき下の歯の内側に入り込んでいるようなケースを指します。
軽度の症例であればマウスピース矯正によって約1年程度で改善できるケースがあります。クロスバイトも症状によりけりですが、顎の幅の問題が大きい場合には拡大床や外科的処置が必要になることもあり、その際はワイヤー矯正が選択されることもあります。
叢生

叢生(そうせい)とは、いわゆるガタガタの歯並び(乱ぐい歯)のことです。
マウスピース矯正では、軽度の叢生で半年〜1年ほど、中等度の叢生では動かす歯の数や移動量が増えるため治療期間は1〜2年程度必要になります。一方、重度の叢生では歯の移動スペース確保のための抜歯が避けられないことも多く、その場合の治療期間は2年以上と長期化する傾向にあります。
抜歯を伴うケースではマウスピース矯正よりもワイヤー矯正のほうが効率的になる場合もあり、症例によっては最初からワイヤー矯正を選択した方が結果的に短期間で終わることもあります。