
費用相場を見て「治療が難しい」とより感じた方もいるかもしれません。しかし、費用負担を軽減する方法はいくつか存在します。具体的には次のとおりです。
- ①部分矯正を検討する
- ②マウスピース矯正を検討する
- ③トータルフィー制度の医院を選ぶ
- ④モニター制度の活用
- ⑤学割制度の活用
- ⑥家族割制度の活用
- ⑦自治体の助成制度の活用
- ⑧医療費控除の活用
①部分矯正を検討する
治療範囲を前歯など一部分に絞れる場合は、部分矯正を選ぶことで費用を大幅に抑えられます。
動かす歯の本数が少ないため、治療期間も3ヶ月から1年程度と短いのが特徴です。自ずと通院回数が減るため、その都度かかる調整料などの費用も軽減できます。
ただし、部分矯正はあくまで見た目の改善を主目的としており、奥歯の噛み合わせなど機能的な問題を根本的に解決するものではない点に注意が必要です。ご自身の歯並びが部分矯正の適用範囲内かどうかは、歯科医師による診断を元に決めるようにしましょう。
②マウスピース矯正を検討する
マウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正に比べて費用を抑えられる傾向にあります。
マウスピース矯正は軽度〜中等度の症例に適しているため制限はありますが、適用できる場合はワイヤー矯正と比較すると10万〜70万円の費用軽減に繋がる可能性があります。
ただし、マウスピース矯正にも様々なブランドがあり、特にインビザライン等の世界的に有名なブランドになると100万円近くになることがあります。そのため費用を抑えるという意味では、実績がしっかりありつつ、コストパフォーマンスにも優れた国産ブランドに注目すると良いでしょう。
③トータルフィー制度の医院を選ぶ
総額費用を治療前に確定させたい、長期間の治療が必要な歯並びである方は、「トータルフィー制度(定額制)」を採用している矯正歯科を選ぶことを強く推奨します。
トータルフィー制度とは、矯正治療にかかる全ての費用を予め「コース料金」などとして提示し、追加料金なしで治療完了まで保証する料金体系のことです。
最大の利点は、歯の動きが想定より遅れるなど治療期間が延長した場合でも、追加費用が一切発生しない点にあります。一方、従来の「処置別払い制度」では、基本料金とは別に通院ごとに調整料が発生するため、治療が長引けば長引くほど総額が増え、最終的にいくらかかるか不透明になりがちです。
最初に提示される金額は処置別払いの基本料金より高く見えるかもしれませんが、最終的な総額費用が安くなるケースも少なくありません。
④モニター制度の活用
矯正歯科が症例写真や体験談を広告・宣伝に使用することを条件に、通常価格よりも安い料金で治療を受けられる「モニター制度」も費用を抑える手段の1つです。
割引率は医院によって様々ですが、数万円から数十万円単位の値引きが期待できます。ただし、モニター制度は基本的に応募要項(軽度症例のみ等)があり、また条件を満たしていても抽選に外れる場合もあるため、当たればラッキーくらいの感覚でいるのがおすすめです。
なお、注意点として顔出しの有無、写真・動画撮影の頻度、SNS投稿の条件などは医院ごとに異なります。事前に「どこまで協力が必要か」「プライバシーは守られるか」を確認し、自分が無理なく協力できる範囲か検討しましょう。
⑤学割制度の活用
高校生や大学生であれば、学割(学生割引)制度を設けている矯正歯科を選ぶことで治療費が安くなる可能性があります。
学割制度とは、その名のとおり学生を対象に矯正治療費の一部を値引きするサービスです。割引率や対象条件は医院ごとに異なりますが、一般的に学生証の提示で検査料や装置料が数%〜数十%割引になるケースが多い傾向にあります。
ちなみに学割の適用には「初回相談時に申し出が必要」「在学を証明する書類提出」など条件がありますので、事前に医院のホームページ等で制度の詳細を調べておくとスムーズです。
⑥家族割制度の活用
ご家族の中に、同じ医院で矯正治療中の方や、過去に治療を終えた方がいる場合、「家族割制度(ファミリー割)」を利用できる可能性があります。
割引額は医院により様々ですが、検査診断料が無料になったり、一律〇万円引きになったりと経済的なメリットが得られます。
家族割を利用する際は、適用条件(家族の範囲や同時治療の必要性など)を確認しましょう。具体的には「兄弟姉妹や親子であること」「同じ時期に治療を開始すること」など要件が定められている場合があります。こちらも事前に医院のホームページ等で確認しておきましょう。
⑦自治体の助成制度の活用
一般的な美容目的の歯列矯正は公的補助の対象外ですが、特定の条件を満たす場合に自治体の医療費助成制度が利用できるケースがあります。
代表的なのは「乳幼児医療費助成制度」です。これは各自治体が子どもの医療費自己負担分を助成する制度で、健康保険が適用される治療に限り対象となります。
歯列矯正自体は原則保険適用外(自費診療)ですが、例外的に保険が利くケースがあります。厚生労働省が定める「先天異常」や「顎変形症」などに起因する咬合異常の矯正治療、あるいは顎変形症の外科手術前後の矯正は保険適用となります。
このように保険診療として矯正を受けた場合、その自己負担分について自治体の乳幼児医療費助成が使える可能性があります。自治体ごとに年齢条件は異なりますが、多くは15歳未満の子どもが対象です。
参考:保険で治療可能な矯正歯科治療について|公益社団法人 日本臨床矯正歯科学会
⑧医療費控除の活用
歯列矯正にかかった費用は、確定申告で「医療費控除」を申請することにより、所得税の一部が還付され、翌年の住民税が減額される可能性があります。
医療費控除とは、自分や家族のために1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に、確定申告をすることで所得税の負担を軽減できる制度です。原則としてその年に支払った医療費が10万円を超えた部分(所得が200万円未満の場合は所得の5%超過部分)が所得控除の対象となり、払い過ぎた税金の一部が返金されます。
ただし、留意すべきポイントは「治療の目的」です。国税庁の見解では、噛み合わせ改善や発音・咀嚼機能の回復など身体の正常な機能の形成・回復を目的とする矯正治療は医療費控除の対象とされています。一方、単に美容を目的とする矯正は医療費控除の対象外となる可能性があります。
実際の税務上の判断はケースバイケースですが、一般的には子どもの歯列矯正や、大人でも噛み合わせ治療を伴う矯正であれば控除対象として認められることが多いようです。
参考:No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例|国税庁