
セラミック矯正が「やばい」「やらなきゃよかった」と言われる理由は、主に次のとおりです。
- 健康な歯を削る必要があるから
- 歯の寿命が縮まるから
- 知覚過敏のリスクがあるから
- 虫歯・歯周病のリスクがあるから
- 口臭悪化のリスクがあるから
- 噛み合わせが狂うことがあるから
- 壊れる可能性があるから
- 再製作時の負担が大きいから
健康な歯を削る必要があるから
セラミック矯正では、虫歯でもない健康な天然歯を大きく削らなければなりません。
被せ物を装着するためには、歯の全周を1.5〜2.0mm程度削り取る必要があります。この過程で、歯の表面を覆うエナメル質の大部分が失われ、その内側にある柔らかい象牙質が露出することになります。
エナメル質は外部の刺激や細菌から歯を守る役割を果たしていますが、これが無くなり象牙質が露出することで、歯は酸や外部刺激に対する防御力が著しく低下します。さらに回転を加える等、本来の歯とは異なる方向へ被せ物を装着する場合、削る量はさらに増え、歯の大部分を失うケースも少なくありません。
もちろん歯を削る処置は慎重に行われますが、健康な歯を犠牲にして人工物を被せる行為は取り返しがつかないことである、いうことは念頭に置いておきましょう。
歯の寿命が縮まるから
歯を削る行為は物理的なダメージだけでなく、歯の寿命そのものを縮めるリスクも伴います。特に問題となるのが「抜髄(神経を抜く)」処置です。
大きく傾いた歯やねじれた歯をセラミックの被せ物で真っ直ぐに見せるためには、歯を大幅に削る必要があり、その過程で神経が露出したり、削る際の熱で炎症を起こしたりするリスクが高まります。そのため、セラミック矯正では神経を抜く処置がしばしば行われます。
しかし、ある研究では被せ物のために削られた歯の約3%〜25%が、後に歯髄壊死(神経が死んでしまうこと)が発生することが報告されています。神経を抜いた歯は血液供給が断たれるため、栄養が行き渡らず枯れ木のように脆くなります。
また別の調査では、被せ物をした歯の寿命の中央値は約11年〜20年程度という報告もあり、天然の歯と比較すると、その寿命は明らかに短い傾向にあります。結果的に抜歯に至るようなケースも多く、長期的な視点で見ると多くのリスクが隠れていることがわかります。
参考:ResearchGate, PubMed
知覚過敏のリスクがあるから
神経を残してセラミック矯正を行った場合でも、知覚過敏のリスクが懸念されます。
歯を削って象牙質が露出すると「象牙細管」と呼ばれる微細な管を通じて、冷たいものや温かいものの刺激が直接神経に伝わりやすくなります。刺激を抑えるために最終的には接着剤で密閉されますが、接着不備や経年劣化によって隙間が生じれば、強い痛みを伴う知覚過敏に悩まされることになります。
痛みが治まらない場合、せっかく装着したセラミックの歯を一度壊し、神経を抜く処置を行った上で再度被せ物をする処置が必要になります。当然ですが、これは患者にとって経済的にも身体的にも大きな負担となります。
虫歯・歯周病のリスクがあるから
セラミック矯正後の歯は、虫歯や歯周病にもなりやすくなります。
被せ物の歯は天然歯と一体化するわけではなく、ミクロ単位の段差や隙間が必ず生じます。この隙間はプラーク(歯垢)が溜まりやすく、なおかつ歯ブラシの毛先が届きにくい場所となります。そのため、被せ物の内部や縁から虫歯になる「二次虫歯」のリスクが常に付きまといます。
ある研究でも、被せ物の歯は天然歯に比べて二次虫歯の発生率が高いことが示されており、これが原因で被せ物のやり直しや抜歯の主な原因の一つとなっています。見た目はキレイでも、歯茎の下では炎症が進行し、気付いた時には手遅れになっているケースも少なくありません。
参考:PMC
口臭悪化のリスクがあるから
セラミック矯正後に「口臭が気になるようになった」という悩みは頻繁に聞かれますが、これは前述の内容と密接に関連しています。
前述のとおり、被せ物と天然歯の隙間には細菌の塊である「プラーク」が停滞します。セラミック自体は汚れが付きにくい素材ですが、その境界部分に溜まった汚れが発酵・腐敗し、口臭の原因になる成分を発生させます。
さらに慢性的な歯肉炎が起きている場合は、歯茎からの出血や排膿(膿が出ること)が生じ、これが特有の生臭い口臭の原因にもなります。
キレイな歯を手に入れたにも関わらず、人との会話で口臭を気にするストレスの方が大きくなってしまう、という本末転倒とも言える事態ですが、この悩みを抱える方が多くいるのが事実です。
噛み合わせが狂うことがあるから
歯列矯正は噛み合わせ改善も考慮するのに対し、セラミック矯正は見た目の改善を最優先します。
歯の位置を無視し、被せ物の形だけで歯並びを整えると上下の歯の位置関係が狂い、特定の歯だけに過度な力がかかることがあります。このような噛み合わせの狂いは顎関節症や筋肉痛、頭痛などを引き起こす原因となります。
また、使用するセラミック材料の硬さも懸念点となります。特に近年主流のジルコニアは天然歯よりも硬度が高く、噛み合わせの調整が不十分な場合は対合歯(噛み合う相手の天然歯)を異常に摩耗させてしまうリスクが報告されています。
簡単に言えば、被せ物の歯がヤスリのように作用し、別の天然歯にまで悪影響を与える恐れがあり、ひいては口腔内全体の健康バランスを崩す要因にもなり得るということです。
参考:The wear of polished and glazed zirconia against enamel
壊れる可能性があるから
セラミック製の歯は、永久的に壊れないわけではありません。
セラミックは非常に硬い性質を持つ反面、衝撃に対して脆く「割れる(破折)」リスクがあります。特に歯ぎしり・食いしばりの癖がある人の場合、セラミックの一部が欠ける「チッピング」や、全体が割れるリスクが高まります。
なお、破損を防ぐために硬い食べ物(氷、飴、煎餅など)を避けるよう指導されることが一般的です。しかし、これは実質的に生涯にわたる食事制限が生まれることを意味し、常に食事内容を気にしなければならなくなります。食生活の質(QOL)に、少なからず悪影響を与えることは言うまでもありません。
再製作時の負担が大きいから
セラミック矯正は一生モノではなく、人工物である以上必ず寿命があります。
一般的にセラミッククラウンの平均寿命(耐久性)は10年〜15年程度と言われています。この際、10年ごとの再治療にかかる経済的負担はもちろんですが、身体的な負担も軽視できません。
特に問題なのが、被せ物をやり直す際に土台の歯を再度削って整える必要がある点にあります。つまり、再治療の度に支台歯は薄く、小さくなっていくということです。これを繰り返すことで、最終的には被せ物を維持できるだけの歯質がなくなり、最後は抜歯に至るというのがよくあるケースです。
ちなみに、現在主流のジルコニアセラミックは非常に硬く、除去する際に歯に大きな振動や熱が伝わりやすいことから、そもそも除去自体が困難になるケースもあります。