目立たない矯正にはどんなものがある？種類・値段・リスク・選び方を解説

目立たない矯正治療には、装置の取り付け位置を工夫したり、装置自体が透明や歯の色に近い素材でできていたりと、様々なアプローチがあります。

代表的なものには下記があり、ここではそれぞれの特徴について解説していきます。

• 裏側矯正・舌側矯正（歯列矯正）
• 審美ブラケット矯正（歯列矯正）
• マウスピース矯正（歯列矯正）
• セラミック矯正（審美矯正）

裏側矯正・舌側矯正（歯列矯正）

裏側矯正（舌側矯正とも呼ばれます）は、歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着して歯を動かす矯正方法です。装置が外側からは見えないため、他人に気づかれにくいのが最大のメリットです。

装置は患者さん一人ひとりの歯の形に合わせてオーダーメイドで製作されることもあり、精密な治療が可能です。出っ歯（上顎前突）、受け口（下顎前突）、叢生（歯のガタガタ）など、多くの症例に対応できますが、高度な技術が必要とされるため、対応できる歯科医師は限られます。また、舌に装置が触れるため、慣れるまでは話しにくさや違和感を感じることがあります。

審美ブラケット矯正（歯列矯正）

審美ブラケット矯正は、歯の表側にブラケットとワイヤーを装着する点は一般的な矯正治療と同じですが、ブラケットの素材に歯の色に近いセラミックやジルコニア、あるいは透明なプラスチックなどを使用することで、装置を目立ちにくくする方法です。

ワイヤーも金属色のワイヤーに白いコーティングを施したホワイトワイヤーや、ロジウムコーティングされたワイヤーなど、目立ちにくいものが選択できます。幅広い症例に対応可能で、裏側矯正に比べて費用を抑えられる傾向があります。

ただし、金属ブラケットと比較すると、セラミックブラケットはやや厚みがあったり、プラスチックブラケットは着色しやすかったりといったデメリットも考慮する必要があります。

マウスピース矯正（歯列矯正）

マウスピース矯正は、患者さん一人ひとりの歯型に合わせて作製された透明なマウスピース型の装置を、段階的に交換していくことで歯を動かす治療法です。代表的なものにインビザラインなどがあります。

装置が透明で薄いため、装着していてもほとんど目立たず、食事や歯磨きの際には自分で取り外せるのが大きな特徴で、金属アレルギーの心配もありません。

適用できる症例は年々広がっていますが、非常に複雑な歯の移動が必要な場合や、患者さん自身による1日20時間以上の装着管理が難しい場合には適さないこともあります。また矯正力の補填のために、歯の表面に「アタッチメント」と呼ばれる小さな突起物を付ける必要がある場合もあります。

セラミック矯正（審美矯正）

セラミック矯正は、歯を動かして歯並びを治す歯列矯正とは異なり、自身の歯を削り、その上からセラミック製の被せ物（クラウンやラミネートベニア）を装着することで、短期間で歯の色や形、歯並びの見た目を改善する審美歯科治療の一種です。

歯を移動させるわけではないため後戻りの心配がなく、結婚式など特定の期日までに見た目を整えたい場合や、歯の色や形も同時に改善したい場合に選択されることがあります。

ただし、健康な歯を削る必要がある上に、場合によっては神経の処置が必要になることもあります。また歯の根の位置は変わらないため、噛み合わせの根本的な改善にも至りません。歯列矯正とは異なり、あくまで対症療法的な側面が強い治療法であることを理解しておく必要があります。

目立たない矯正治療の値段は、選択する装置の種類、治療範囲（部分矯正か全体矯正か）、歯並びの状態、治療期間、そして歯科医院によって大きく異なります。

一般的に特殊な技術や材料が必要となる裏側矯正や、オーダーメイドで多数の装置を作製するマウスピース矯正は、従来の表側矯正（ワイヤー矯正）と比較して費用が高くなる傾向にあります。セラミック矯正については1本あたりの費用で計算されることが多く、治療する本数によって総額が変動します。

ここではあくまで目安に過ぎませんが、下記の観点で料金相場を紹介していきます。

• 矯正装置別の値段
• ブラケット別の値段
• ワイヤー別の値段

矯正装置別の値段

一般的に裏側矯正は高度な技術を要するため費用が高額になり、表側矯正の審美ブラケットも通常の金属ブラケットより割高になります。マウスピース矯正も装置をオーダーメイドで多数作製する費用などから、一般的な表側矯正と同程度かそれ以上の費用帯になることが多い傾向にあります。

ブラケット別の値段

ワイヤー矯正を選択する際は審美性に優れたブラケットを選択可能ですが、上記表のように基本的には追加料金が発生します。そして、それぞれの耐久性にも違いがあるため総合的に判断することをおすすめします。

例えば、透明なプラスチックブラケットは審美性が高いものの、経年で多少の変色が起こる場合があり、強度も金属より劣るため適用には症例や期間を考慮する必要があります。ジルコニアやセラミック製ブラケットは変色せず強度も高いですが、その分費用も高めになります。

ワイヤー別の値段

ワイヤー矯正においてはブラケットに加え、審美性に優れたワイヤーも選択可能です。

一般的な審美ワイヤーとしては、金属ワイヤーを白や銀白色にコーティングしたホワイトワイヤーやロジウムワイヤーが主流です。これらは多くの場合、オプション費用となっている傾向にあります。

注意点として、コーティングは治療の経過で剥がれてきたり着色する恐れがあり、剥がれると下の金属色がまだらに見えることがあります。そのため、場合によっては定期的な交換やメンテナンスが必要になる点も考慮する必要があります。

目立たない矯正治療は魅力的な選択肢であるものの、いくつかのリスクや注意点が存在します。

ここでは各治療方法のリスクについて解説していきます。

• 裏側矯正のリスク
• 審美ブラケット・ワイヤーのリスク
• マウスピース矯正のリスク
• セラミック矯正のリスク

裏側矯正のリスク

裏側矯正は、まず装置が舌に直接触れるため、治療開始から慣れるまでの間は発音のしづらさを感じたり、舌に口内炎ができやすかったりすることがあります。

また歯の裏側は複雑な形状であることから食べ物が詰まりやすく、歯磨きがしにくい点も挙げられます。清掃が不十分だと虫歯や歯周病のリスクが高まるため、丁寧なブラッシングや専用の清掃用具の使用が不可欠になります。

さらに治療には歯科医師の高度な技術が要求されるため、表側矯正に比べて対応可能な病院・クリニックが限られる傾向にあります。

審美ブラケット・ワイヤーのリスク

審美ブラケットや審美ワイヤーを用いた矯正治療は、使用するものによってそれぞれ留意点があります。

例えば、セラミック製のブラケットは金属製に比べて強度がやや劣り、硬い物を食べた際などに稀に割れたり欠けたりするリスクがあります。プラスチック製のブラケットは比較的安価ですが、カレーやコーヒー、ワインといった色の濃い飲食物によって着色しやすいというデメリットがあります。

審美ワイヤーも同様のことが言え、例えばホワイトワイヤーは表面の白いコーティングが食事や歯磨きによって徐々に剥がれてしまうことがあり、特に奥歯などでは剥がれやすい傾向にあります。コーティングが剥がれれば中の金属部分が露出してしまい、審美性が損なわれることになります。

マウスピース矯正のリスク

マウスピース矯正は、取り外しが可能で目立ちにくいという利点がありますが、その効果は患者さんの自己管理に大きく左右されます。

具体的には1日20〜22時間以上の装着時間が必須であり、これを守らないと計画通りに歯が動かず、治療期間が延びたり、期待した効果が得られなかったりするリスクがあります。

また、食事のたびに装置を取り外し、食後は歯磨きをしてから再装着する必要があるため、手間がかかると感じる方もいます。また全ての症例に適応できるわけではなく、抜歯が必要な複雑なケースや、骨格的な問題が大きい場合には対応が難しいこともあります。

セラミック矯正のリスク

セラミック矯正は審美性において即効性がある一方、歯列矯正とは根本的に異なる治療法であり、後戻りのできない大きなリスクが伴います。

最大の注意点は、健康な歯を削る必要があるという点です。一度削った歯は元に戻すことができず、歯の寿命を縮めてしまう可能性も否定できません。歯を削る量や角度によっては、歯の神経を抜く処置が必要になることもあり、神経を抜いた歯はもろくなりやすい傾向にあります。

またセラミックの被せ物と歯茎の境目に汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病になるリスクがあります。セラミック自体も永久的なものではなく、破損したり、経年劣化により色調が変わったり、歯茎が下がって境目が見えてきたりするため、数年〜十数年で再治療が必要になることが一般的です。

自分に最適な目立たない矯正装置を選ぶためには、見た目だけでなく、費用、治療期間、適応症例、そして信頼できる歯科医院選びなど、多角的な視点から検討することが重要です。

まず、自分がどの程度「目立たなさ」を求めるのか、そして生活スタイルや予算、治療にかけられる期間などを総合的に考慮し、優先順位を明確にすることが大切です。

その上で、専門的な知識を持つ歯科医師に相談し、精密な検査と診断に基づいた提案を受けることが、後悔のない治療への第一歩となります。

外見・費用・期間・着け心地の何を優先するか

目立たない矯正治療を選択する際は外見（目立たなさ）だけでなく、費用・治療期間・着け心地にも注目し、何をどの程度優先するかを考えることが大切です。

例えば、外見を最優先する場合は裏側矯正やマウスピース矯正が有力な候補となりますが、これらは一般的に費用が高くなる傾向があります。さらに裏側矯正は喋り（発音）にも支障が出るケースがあるため、仕事によっては適さない場合があります。

もちろん最終的な判断は、歯科医師による歯の状態チェックと治療計画に依存するものの、外見・費用・期間・着け心地の4点の優先度を明確にしておけば、その希望を汲み取った治療に臨める可能性があります。

自身の症例に適応する治療法なのか

どんなに目立たない矯正装置であっても、ご自身の歯並びや顎の状態（症例）に適応していなければ、期待した治療効果を得ることはできません。

例えば、マウスピース矯正は多くの症例に対応できるようになってきましたが、骨格的な問題や歯の大幅移動が必要な症例には不向きであり、こういった症例にはワイヤー矯正が採用される傾向にあります。

仮にワイヤー矯正が必要になった場合、次点で裏側矯正が候補に挙がるかと思います。しかし、裏側矯正は重度の噛み合わせ問題などには最適解でないケースもあり、このようなケースでは前側矯正である審美ブラケット矯正も検討の余地があります。

上記のように、必ずしも目立たない矯正ができるというわけではありません。したがって、まずは自己判断せずに必ず矯正歯科医による精密検査と診断を受け、ご自身の症例に最適な治療法は何かを把握しましょう。その上で治療効果と審美性のバランスを考えた選択をすることが重要です。

実績・設備が十分な歯科医院またはクリニックなのか

裏側矯正やマウスピース矯正などの専門性の高い治療を受ける場合は、歯科医院やクリニック選びが非常に重要です。

まず確認したいのは、担当する歯科医師が矯正治療の専門的な知識と技術、十分な経験を持っているかという点です。日本矯正歯科学会には「認定医」やさらに上位の「専門医」といった資格制度があり、これらは一つの目安となります。

また、精密な診断や治療計画の立案には、セファログラム（頭部X線規格写真）や歯科用CT、口腔内スキャナーなどの医療設備が整っていることも重要なポイントです。その上でクリニックの雰囲気や衛生管理、通いやすさなども考慮し、信頼して治療を任せられる歯科医院を選びましょう。

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