
矯正による顔の印象変化は、もともとの歯並びや噛み合わせの状態によって影響度が異なります。ここでは矯正治療によって顔が変わりやすい代表的な歯並びを挙げ、その理由を説明します。
- 出っ歯(上顎前突)
- 受け口(下顎前突)
- 口ごぼ(上下顎前突)
- ガタガタ歯(叢生)
- ディープバイト(過蓋咬合)
出っ歯(上顎前突)
出っ歯(上顎前突)は、上の前歯や上顎自体が前方に突き出している噛み合わせです。口を閉じても上唇が突出し、横から見るとEラインより唇が前に出ているため、いわゆる口元の突出感が強くなります。
このようなケースでは矯正治療による顔つきの変化が顕著です。上顎の前歯の位置を適正に後ろへ引っ込めてあげることで、口元の突出が改善し唇がEライン付近まで後退します。その結果、横顔のラインが劇的に整って美しい印象になります。
注意点として、出っ歯の矯正では抜歯が必要になるケースも多いですが、抜歯を避けて無理に歯を並べると口元が引っ込みきらず、歯列自体が外に広がって「余計に口元が出て見える」ようになる場合もあるため、治療方針は専門医とよく相談することが大切です。
受け口(下顎前突)
受け口(下顎前突)は、下の前歯や下顎が前方に突出し、上の前歯より前に出てしまっている噛み合わせです。横から見ると下顎が突き出ており、しゃくれ顔や猿顔などと表現されることがあります。
受け口の場合、矯正治療(場合により外科手術併用)によって上下の顎の位置関係を正常に戻すと、顔貌が劇的に改善することが多いです。具体的には下顎の突出感が解消され、口元が引っ込みます。これによってEラインが改善され、バランスの取れた横顔になります。
ただし、受け口の程度によってはマウスピース矯正のみでは治せず、ワイヤー矯正+外科手術を要する場合もあります。マウスピース矯正が適用できる軽度〜中等度の症例であり、下の歯列を後方に下げる・上の歯列を前に出す・顎間ゴムで誘導する等の手法で対応します。
口ごぼ(上下顎前突)
口ごぼ(上下顎前突)とは、上下の前歯がともに前方に突出している状態を指す俗称で、正式には上下顎前突(両顎前突)と呼ばれます。日本人に比較的多いとされており、口元全体がもっこりと前に出ており、唇を閉じるにも力が必要なケースが多いです。
治療では一般的に小臼歯の抜歯を上下で計4本行い、そのスペースを使って前歯全体を後方に下げていきます。これにより、上下の唇位置がぐっと後退し、横から見た口元の突出が大幅に減少します。結果として「鼻・唇・顎先が一直線に近づく」理想的なEラインに近づき、顎先の輪郭もはっきりしてきます。
口ごぼの改善は、見た目の変化量が大きい分だけ患者の満足度も高い傾向があります。ただし、抜歯を伴う矯正治療となるため、前述したほうれい線が深くなるリスクもそれに比例して高まります。したがって、担当医にはその点も相談するようにしましょう。
ガタガタ歯(叢生)
ガタガタ歯(叢生)とは、歯が顎の大きさに対して大きかったり、本数が多かったりして重なり合って生えている状態を指します。乱杭歯(らんくいば)とも言われ、見た目がデコボコ・ガタガタの歯並びが特徴です。
叢生の治療における顔貌への影響は控えめですが、笑顔の印象が明るくなることがあります。歯並びの凸凹が無くなり、口元のラインが一直線に揃うため、正面顔の印象変化は顕著です。分かりやすく言うなら「八重歯が飛び出していた人が矯正で笑顔が素敵になった」といったようなイメージです。
なお、重度の叢生である場合は抜歯が必要になります。前述のとおり、抜歯を伴う矯正治療ではほうれい線が目立つリスクも伴うので、担当医と相談の上で適した治療計画を作ってもらいましょう。
ディープバイト(過蓋咬合)
ディープバイト(過蓋咬合)は、噛み合わせが深すぎて上の前歯が下の前歯を大きく覆っている状態です。歯の重なりが強い分、顔が短く見える傾向にあり、また強い力で噛む癖がついていることが多く、顎周りの筋肉が凝り固まってエラが張るケースも少なくありません。
矯正治療による変化としては、まず噛み合わせが合うことで顔の長さがやや増加します。これにより、Eラインが改善され、バランスの取れた横顔に変化します。また、咬合力が適正になるため筋肉の過緊張が取れ、エラの張りが緩和して顔がほっそり見えることも多いです。
いずれにしてもディープバイトの矯正は口元の前後位置にはそれほど影響しませんが、縦方向のバランス改善という点で顔貌に良い変化をもたらす傾向にあります。結果として、正面から見た際に顎先がシュッとし、微笑んだ時の下歯の見え方も若々しくなります。